クマタカ観察記録まとめ

絶滅危惧種クマタカが
生きる土地

大型風車33基が建設予定

青森県十和田市惣辺放牧場での【絶滅危惧種】クマタカの観察記録をまとめました。生物調査のプロに指導を受けながら作成したものです。
ディスプレイ飛行をたびたび行うなど、繁殖や営巣の可能性が非常に高い状況です。

旋回飛行するクマタカ

撮影:2023年10月

奥入瀬渓流や十和田湖周辺で生きるクマタカたちが犠牲になってしまう未来。 なんとか避けたい。 これまで行政にのみ報告し「希少種であるクマタカの飛行経路などを明かせば繁殖地も外部に分かり危険」と記録を非公開にしてきました。

しかし「今のままでは地元の同意なしに事業が進みかねない」と考え、クマタカのデータを持つ他の地元団体と協議の上、公開を決めました。

私達の活動は、風力に反対するために行っているわけではありません。
十和田市の豊かな自然を次世代に伝えるため、市民参加型の自然保護や環境改善についての学びの場をつくるものです。

気候危機の影響が十和田市でも問題になっており、環境が大きく変わってしまう前に、次世代のために今ある自然の状況、特に野生動物や森の記録を少しでも多く残しておくことが必要です。
専門家の指導を受けた記録として整理することで、将来的に環境変化があった際にも、その影響を把握し対策を講じることに役立つと考えています。
また市民の一人ひとりが自然を保護し、大切さを伝えていく当事者として、継続的に学んでいくことも目的の一つです。

2023年11月
2023年11月
2023年11月
2023年11月

市民団体とりどり以外からも
こんな声が寄せられています。

【奥入瀬渓流への影響が無いかと言い切れるのか?】
40代、奥入瀬渓流で長年ガイドしている者より

以下の点において、自然環境への影響は少なからずあると危惧しております。
①景観への影響
主要な眺望点からは風力発電機が視認され、十和田八幡平国立公園の原始性の高い景観が損なわれることが予想されます。特に八甲田連邦からの眺望、十和田湖面からの眺望、落葉期の奥入瀬渓流や八甲田周辺からは風力発電機の姿が常に視界に現れ、世界に誇る景観美を持つ当地域の観光資源の価値を著しく低減させてしまいます。奥入瀬渓流だけの問題では無く、青森県として自然資源を失ってしまうという大きな問題と捉えております。



②奥入瀬渓流への影響(水環境)
風力発電機を設置するエリアは奥入瀬川水系の支流のひとつであるソウベ川の源流エリアです。源流エリアは軽石流堆積物が主な地層となっている為、過去の惣辺放牧場の造成の際に行われた森林伐採によって周辺の地表や土砂の流出が顕著となっており、降水後はソウベ川に濁りが生じ易くなっています。今回の工事にあたり、ソウベ川の源流部にある森林の大規模な伐採が行われるのは明白であり、周囲からの土砂流出が更に進むことが予想されますので、奥入瀬渓流への濁りが更に進むと予想されます。

③奥入瀬渓流周辺の生態系への影響
・クマタカの生息地に対する影響
国指定および県指定の保護対象種であるクマタカは奥入瀬渓流では主にブナやカツラの大径木に営巣し、生態系上位種として当該地域のエコツーリズム資源として重要視されている対象です。奥入瀬渓流域ではクマタカの繁殖が複数確認されており、一定の個体数が常に生息しております。いずれの個体も、採食環境は主に森林内および林縁環境であり、クマタカの主要な餌動物として奥入瀬渓流域ではテン、ムササビ、リス、ノウサギ、アオダイショウ、中型鳥類(カケスやアオバトなど)が主です(観察事例より)このうち、ノウサギの捕獲、および営巣木への運搬が、調査により観察されていますが、ノウサギの個体数は渓流域内では多くありません。ノウサギの主な生息環境は牧草地と森林環境の際(きわ)であり、クマタカはこのような環境で、待ち伏せ型のハンティングを行うことが多いです。惣辺牧野ならびにそれに準ずる林縁環境が、奥入瀬渓流に生息する本種の狩場(ハンティングエリア)として利用されている可能性は十分に考えられるので、現在の計画地に風力発電機を設置するのは、クマタカへの影響度は少なからずあると考えられます。また調査により建設計画地においてクマタカの営巣行動が確認されており、若い個体へのバードストライクが懸念されます。風力発電施設における大型猛禽類の事故事例は既に多くの報告がなされており、当該施設の建設予定環境を、本種がどのように利用しているのか。その状況、頻度を掌握するための十分な影響調査は更に必要と考えております。
また、移動中の渡り鳥への影響も危惧されます。
=クマタカ以外の猛禽類で、奥入瀬渓流域で繁殖している猛禽類には、他にハチクマ、ノスリなどがあります。また春秋の渡りの時季にはオオタカ、ハイタカ、マガンなどの移動が確認されています。当該施設の建設予定地が、これらの鳥類また小型の季節性移動鳥類(ヒタキ類・ムシクイ類など)の移動にどのような影響を与えるかの十分な検証も必要と考えております。

風力発電事業などの再生エネルギーは必要だと考えておりますが今回の事業は奥入瀬渓流や周辺の自然環境に影響がある(失った自然は戻らない)可能性を多く含んでいる為、自然環境への影響については慎重に検証を進めること。また地域への合意が得られない事業は進めるべきではないと思っています。
※Fit制度=

✖

 地産地消でないエネルギーは、地域の自然を売るだけで青森県にとってベネフィットは無いと思います。

2024年9月20日 東奥日報さんに掲載いただきました。